アセットアロケーションの理想的な比率とは？ 配分の決め方を解説！

「アセットアロケーションの理想的な比率は？」「アセットアロケーションの比率は年代で変わる？」といった疑問を持っていませんか？

資産運用をする場合、アセットアロケーションの比率を決めることでリスク分散しつつリターンを安定化できます。

本記事では、アセットアロケーションの年代別の理想的な比率やポートフォリオとの違いを解説します。

アセットアロケーションとは？

アセットアロケーションとは、投資するお金をさまざまな資産に分けることです。アセットアロケーションを実施することで、リスクを分散しつつ安定したリターンを狙うことができます。

具体的には、資産を株式だけでなく、株式、債券、不動産、現金といったように配分します。

アセットアロケーションの配分は、取れるリスクや投資を行う目的により変わるので注意が必要です。

アセットアロケーションにはいくつかのアプローチ方法があります。

アセットオンリー・アプローチ	投資対象の期待リターンを基準に最適な配分を決定する
負債対応投資（LDI）	将来の債務支払いに備えて配分を決定する
サープラス・フレームワーク	債務の増減を考慮しながら配分を決定する

また、アセットアロケーションとよく似た言葉にポートフォリオがありますが、両者の違いについてよくわからない人もいるかもしれません。アセットアロケーションは資産の配分を決定する方法に対して、ポートフォリオでは、実際に保有する具体的な金融商品や資産を決める点で異なります。

特に長期的な資産形成を考えている場合は、アセットアロケーションによりどのような配分でどのような資産に投資するか決めることは重要なことです。

アセットアロケーションの理想的な比率例

アセットアロケーションの理想的な比率は年代によって異なります。

1. 20代〜30代のアセットアロケーションの理想的な比率
2. 40代〜50代のアセットアロケーションの理想的な比率
3. 60代以上のアセットアロケーションの理想的な比率

これから資産運用を検討している人は、ご自身の年代の理想的な比率を知っておきましょう。

1.20代〜30代のアセットアロケーションの理想的な比率

20代〜30代のアセットアロケーションの理想的な比率は、株式70％、債券、20％、現金・預金10％です。

若い世代はリスクを取る余裕があり、長期的な成長が見込まれる株式への投資比率を高めに設定することが推奨されます。特に国内株式と先進国株式を組み合わせることで、リターンを最大化しやすくなります。また、株式の一部であればリスクは高いものの成長が見込める新興国に投資しても良いかもしれません。

一方で、株式のリスクを軽減するために債券への投資も重要です。債券は株式と逆方向に動く傾向があるため、株価の下落に備えられるでしょう。基本的には米国や日本など先進国債券のリターンが安定しています。

最後に、現金や預金として資産を保有しておくことも重要です。長い人生では、急な出費が必要になることや新たな投資機会のチャンスがやってくることは珍しくありません。さらに、ある程度の現金を保有しておくことで、精神的な余裕が生まれるでしょう。

2.40代〜50代のアセットアロケーションの理想的な比率

40代〜50代のアセットアロケーションの理想的な比率は、株式40％、債券50％、現金・預金10％です。

株式は値動きが大きくリスクが高いため、20代や30代よりも比率を抑えます。一般的には国内や米国株を中心に保有しましょう。

一方で、40代〜50代は資産の安定性を重視するため、債券の比率を高くします。先進国の国債や高い格付けの社債などに投資すれば、リスクを抑えながら安定したリターンを得られるでしょう。

また、老後資金や子供の教育費に備えるために、資産の10％は現金や預金で保有しておくことも重要です。

40代〜50代は老後が近いため、働ける時間も少なくなりつつあります。万が一、大きな損失を出してしまうと、退職までの給料で取り戻せない可能性があります。20代〜30代よりもリスクを抑える方向にシフトしましょう。

3.60代以上のアセットアロケーションの理想的な比率

60代以上のアセットアロケーションの理想的な比率は、株式30％、債券50％、現金・預金10％です。

60代以上の場合、株式の比率を40%から30%に減少させることで、損失を被るリスクを抑えます。退職後、ほとんどの人は年金収入に頼ることになります。また、老後に資産運用で大きな損失を出してしまうと、ほぼ取り返しがつかなくなるでしょう。よって、株式・債券・現金の中で最もリスクの高い株式の比率は抑えるべきです。

一方、債券の比率は引き続き50％にしておきましょう。株式の値下がりリスクを抑えつつ、安定した収入を確保することが重要です。

最後に、現金の比率は20%に増やしましょう。60代以降になると、いつ病気にかかってもおかしくないため、治療費などの負担が大きくなる可能性があります。60代未満の人と比べると収入も減少するため、現金・預金の比率は20％に上げましょう。

アセットアロケーションの比率を決める際のポイント

アセットアロケーションの比率を決める際にはポイントがあります。

1. リスク許容度を確認する
2. 投資目的を明確にする
3. 異なる資産に分散する
4. 定期的に見直しをする
5. 現金を確保する
6. 定期的にリバランスをする

それぞれのポイントについて順番に見ていきましょう。

1.リスク許容度を確認する

1つ目のポイントは、リスク許容度を確認することです。

リスク許容度とは、投資家が受け入れられるリスクすなわちいくらまで損失を出しても良いのかの程度を示す指標です。

リスク許容度は以下の項目により決定します。

	リスク許容度が高い	リスク許容度が低い
年齢	若い	年配
投資目的	資産形成	資産保全
経済状況	収入が多くまたは安定している	収入が少なくまたは不安定

同じ年代でも投資家の性格やライフステージによってリスク許容度は大きく変わるので注意が必要です。例えば、20代で積極的に投資で資産を増やしたいと考えている人はリスク許容度が高いですが、その一方で、投資に対する恐怖心がありリスク許容度が低い人もいます。このような場合は、無理にリスクを取る必要はありません。

また、40代であっても、住宅ローンの支払いがある程度進んでいる人とそうでない人、子供の教育費が多くかかる家庭と少なく済む家庭では、資産運用に回せるお金も大きく変わるでしょう。

このように、アセットアロケーションの比率を決めるときは、まずご自身のリスク許容度がどのくらいかを確認する必要があります。

2.投資目的を明確にする

2つ目のポイントは、投資目的を明確にすることです。

投資目的を明確にすれば、適切なアセットアロケーションの比率がわかるため、リスクを取り過ぎて大きな損失を被ったり、リターンを軽視して資産をあまり増やせないといった事態を招く可能性は低くなるでしょう。

例えば、老後に備えて長期的な資産形成をしたい場合は、株式などに積極的にリターンを狙いにいっても問題ありません。

一方で、リスクを抑えながら定期的な収入を得たい場合は、債券への投資を推奨します。

既に退職間近で多くの収入を期待できない場合は、増やすことよりも今ある資産を守ることが重視されるため、債券や現金といった安全資産の比率を高くしましょう。

3.異なる資産に分散する

3つ目のポイントは、異なる資産に分散することです。

異なる資産クラスに分散投資するべき理由は、リスクを軽減しつつリターンを最大化できる可能性があるからです。

例えば、以下は株式、債券、不動産、コモディティ、現金のリスクとリターンの関係ですが、基本的にリスクが高いほどリターンも高く、逆にリスクが低いほどリターンも低くなることがわかります。

	リターン	リスク
株式	高め	高め
債券	中程度	中程度
不動産	やや高め	やや高め
コモディティ	やや高め	やや高め
現金	低い	低い

株式だけで資産を保有していた場合、値下がりにより大きな損失を被る可能性があります。しかし、資産の一部を株式と逆方向に動く傾向がある債券や金（コモディティ）で持っておけば、債券および金の上昇分で株式の値下がり分をいくらかカバーできるでしょう。

このように、異なる資産に分散することで、大きな損失を被る可能性を低くできます。

4.定期的に見直しをする

4つ目のポイントは、アセットアロケーションの比率について定期的に見直しをすることです。

以下の理由により、アセットアロケーションは定期的に見直す必要があります。

• 経済の状況や相場の変化
• ライフステージの変化
• 投資目的の変更

経済の状況や相場が変化すると、期待できるリターンを得られなくなることがあります。例えば、不景気により長期間ほとんどの株が値下がりしている場合は、株よりも債券や現金、コモディティなど他の資産の比率を上げたほうが多くのリターンを期待できるかもしれません。

また、急遽子供の教育ローンの支払いが必要になった、地方に引っ越して毎月の支出が大きく減った、転職により年収が大きく変わったなどライフステージが変化した場合は注意が必要です。リスク許容度が変わることで、アセットアロケーションの比率の見直しが必要になるかもしれません。

他に、投資目的が途中で変わった場合は、見直しが必要です。

アセットアロケーションは、一般的に年1回から数回程度の頻度で見直しを検討しましょう。

5.現金を確保する

5つ目のポイントは、現金を確保することです。

現金を確保すべき目的は、生活防衛資金の確保や別の資産へ投資したいときに備えるなどがあります。

一般的にリスク資産（株式などリスクが高い金融商品）の比率は、100から年齢を引いた割合で求めるため、現金の比率は年齢と同じにするのが良いでしょう。

例えば、40歳の人は、100から40を引いた60がリスク資産、年齢と同じ40を現金などの無リスク資産にします。

特に、一般的なアセットアロケーションの比率よりも現金の比率を高めてリスクを抑えたい場合は、この方法で現金の比率を決めても良いでしょう。

なお、基本的に年齢が上がるにつれて現金比率を増やすことが推奨されます。

6.定期的にリバランスをする

6つ目のポイントは定期的にリバランスをすることです。

リバランスとは、資産の配分割合が当初設定した比率からずれた場合に、比率を元に戻す作業です。

例えば、500万円のうち株に300万円（60％）、債券に150万円（30％）、現金に50万円（10％かつ変動なし）の比率で運用していたケースで考えてみましょう。

株や債券の価値は相場の変動により増減します。1年後に株が20％値上がりして、債券が10％値下がりした場合、株と債券、さらに現金の配分は当初設定した比率からずれます。

	当初の比率	1年後の比率 （リバランス前）	リバランス後の比率
株	300万円（60％）	360万円（66％）	327万円（60％）
債券	150万円（30％）	135万円（24.8％）	163.5万円（30％）
現金	50万円（10％）	50万円（9.2％）	54.5万円（10％）
資産合計額	500万円	545万円	545万円

※小数点第2位を四捨五入した数字です。

株の比率が高くなっている状況では、株の値下がりによる損失は大きくなるため、リバランスにより元の比率に戻しましょう。

リバランスの方法は、元の比率より高くなった分の資産を売却したお金で、元の資産より低くなっている資産を購入します。

今回のケースでは、以下の手順でリバランスをおこないます。

1. 現在の資産から株の60％、債券の30％、現金の10％の金額を計算する
2. 株を33万円分売却して現金に換える
3. 33万円のうち、28.5万円分の債券を購入する
4. 残りの4.5万円は現金として保有する

このような手順でリバランスを行えば、株が値下がりした場合のリスクを抑えることが可能です。

一般的にリバランスは、年1回の頻度で行いましょう。 

アセットアロケーションの理想的な比率はリスク許容度や投資目的も重要

アセットアロケーションの理想的な比率は年齢によって異なります。一般的には、年齢が若いほど株式の比率を増やし、現金・預金の比率を減らしましょう。一方で年配層になると、資産を守ることが重要なため、株式の比率を減らして、債券や現金・預金の比率を上げるべきです。ただし、年齢だけでなく、リスク許容度や投資目的によっても理想的な比率は変わるので注意が必要です。

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