2021年以降、ドル円の為替レートは急速に米ドル高・円安に進んでいます。そして、2022年9月には、実に24年ぶりに日本銀行によるレートチェックが実施されたことが報道され、大きな話題となりました。
本記事では、日本政府・日銀によるレートチェックが何なのか、過去にレートチェックが実施されたときの相場について詳しく解説します。
ドル円やクロス円の取引をしている人は、ぜひ参考にしてください。
レートチェックとは、日銀が円買い・ドル売りの取引ができる価格を銀行に尋ねる行為のことで「ドル売りだと、いくらのレートでいけるか」というように聞きます。
レートチェックは政府・日銀が通貨を売買して相場に介入する「為替介入」の一歩手間で行われることがあります。
現代では、為替レートの確認はオンラインでわかりますが、わざわざ銀行のディーラーにレートを確認することで、日銀が為替介入の準備に動いているとアピールする狙いがあるといわれています。
そのため、レートチェックが実施されたことがわかると、市場関係者は為替介入に対して警戒するようになり、持ち高を調整する動きが広がりやすくなるでしょう。
また、為替介入が実弾と表現される一方で、レートチェックの時点では、まだ相場に介入をしていないため、空砲と表現することがあります。
レートチェックが行われても、即為替介入に踏み切るとは限りません。
なぜなら、為替介入に踏み切ると、投機的な円売りを誘発して為替レートが不安定になる恐れがあるからです。そうなれば、日本経済に悪影響が及ぶ可能性があります。
加えて、インフレの続く米国は、日本と協調してのドル売り・円買い介入や、日本単独での為替介入を容認しないことがあります。
というのも、ドル高は米国の輸入価格を抑える効果があることから、ドル安への誘導が歓迎されないからです。
また、日本単独での介入の場合、介入額が少なく効果が限定的といえるでしょう。
そのため、市場関係者の間では、レートチェックを行っても、即為替介入に踏み切らないと見ている人もいます。
政府としては、米国の協力なしで為替介入することは避けたいものです。そこで、財務大臣や財務官が為替介入の実施を示唆する「口先介入」を行うことがあります。
口先介入とは、いわば「このまま円安が進んだら為替介入する」という強いコメントを発信して、円高方向に誘導する方法です。
口先介入を行っても、為替相場の状況が変わらないと判断すれば、レートチェックの実施、そして為替介入の実施へと動くのです。
ここからは、過去に政府・日銀がレートチェックを実施した際に相場がどのように動いたか詳しく解説します。
レートチェック時に相場がどうなるか気になる人は、ぜひ参考にしてください。
最初に紹介するのは、1998年6月のレートチェック後の相場です。
1995年に1ドル80円だった米ドル円は、1998年6月に入ると140円を超えるようになっていました。
そこで、財務省は6月17日にレートチェックを実施しました。実施後の4日間でドル円は146円から134円まで急落します。
しかし、その後反転し8月にはレートチェック実施直前の価格も超えたのです。このように、1998年6月のレートチェック後にドル円の為替レートは下落しましたが、長くは続きませんでした。
次に紹介するのは、2022年9月14日のレートチェック後の相場です。
9月14日の午前中、ドル円は144円台まで上昇していました。9月14日の午後に日本銀行がレートチェックを実施したことが日本経済新聞により報道されると、ドル円は数時間で約2円急落しました。
9月14日のレートチェック後の相場は、すぐに円高方向に動いたものの、為替介入が行われるまで(為替介入の実施は9月22日)に時間がかかっています。
このことから、レートチェックを実施してもすぐに為替介入が行われるとは限らない点に注意が必要です。
政府・日銀によるレートチェックの実施について、米ドル円を取引するトレーダーは注意する必要があります。
ここからは、トレーダーがレートチェックについて知っておくべきことを紹介します。
政府・日銀がレートチェックを実施する場合、その前段階で財務大臣や財務省が以下のような発言をすることがよくあります。
為替への警戒度 | 主なコメント |
1 | 相場についてコメントしない |
2 | ・円安にはいい面もある
・安定的推移が望ましい |
3 | ・市場を注視している
・急激な変動は望ましくない |
4 | 円安が急速に進んでいる |
5 | ・必要とあれば断固たる措置を取る
・いつでもやる用意がある |
1〜5へ進むにつれて、政府や日銀の警戒度は高くなっていきます。まだ、口先介入の段階ですが、警戒度が5以上になるとレートチェックの実施や為替介入の可能性が高くなるでしょう。
財務大臣や財務省の発言は、日々ニュースで報道されているため、常に追いかけるようにしたほうが良いでしょう。
レートチェックの可能性が高そうなときは、市場関係者が為替介入を警戒しているといったニュースが多く報道されるようになります。
為替介入についてのニュースが報道されるようになったら、現在保有しているポジションを全額もしくは一部決済することを推奨します。
なぜなら、政府・日銀がレートチェックを実施したことが報道された後では、急激な為替レートの変動により、大きな損失を被る可能性があるからです。
レートチェックの変動を見越して大きな利益を狙うのは、おすすめできません。
政府・日銀のレートチェックが行われた場合、米ドルだけでなく、ユーロ円や豪ドル円などのクロス円の為替レートも同時に変動する可能性があります。
ほとんどの日本人トレーダーはクロス円を取引する機会が多いため、米ドル円をあまり取引しない人でも無関係ではありません。
以下は、日銀が2022年9月14日にレートチェックをした際のユーロ円のチャートです。ドル円だけでなく
ユーロ円についても約100pips下落していることがわかります。
このことから、日銀がレートチェックを実施すると、ドル円やクロス円のレートが大きく変動することがわかるでしょう。
政府や日銀によるレートチェックや為替介入は、相場に大きな影響を与えます。しかし、一時的にドル安・円高になったとしても、そのまま下落し続けることはあまりありません。
むしろ、一時的に下落したタイミングをチャンスと捉えてロングポジションを持つ投資家も多くいます。レートチェックや為替介入をしても長期のドル高・円安トレンドを変えるまでに至らないこともよくあります。
実は、レートチェックを行ってから為替介入に踏み切ることは多くありません。過去の相場では、レートチェックなしに為替介入をした回数のほうが多くあります。
2022年9月14日に約24年ぶりにレートチェックを実施したと報じられましたが、その期間、政府と日銀は150回以上も為替介入を行っています。
したがって、レートチェックについて警戒するのはもちろん、いつ為替介入があっても大きな損失を被らないようにトレードをすべきです。
2024年になってからもドル高・円安は急速に進行しており、2024年6月後半には1ドル161円に到達しました。
そのため、今後日本政府や日銀によるレートチェックや為替介入が実施される可能性は十分あります。
ドル高・円安を抑制するためのレートチェックが実施されると、ドル円やクロス円の価格は大きく下落しやすくなります。
したがって、ほかの投資家同様に、保有しているポジション量を減らして損失リスクを抑えるべきです。
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