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世界中の中央銀行は、インフレ圧力、政治的不確実性、そして進化する貿易力学という複雑な問題に直面している。3月には政策対応が大きく分かれた。地政学リスクの高まりや貿易懸念が強まる中、日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を据え置いた一方で、スイス国立銀行はデフレリスクに対抗するために再び金利を引き下げた。一方、イングランド銀行はインフレ率が高止まりしていることから、引き締め的な姿勢を維持した。また、トルコの中央銀行は、政情が不安定な時期に自国通貨を安定させるため、市場を驚かせる大幅な利上げを行った。このように各国がそれぞれの課題に対処する中で、世界的な金融政策の相違が拡大していることを、これらのさまざまな決定が浮き彫りにしている。
日本銀行は3月19日、米国の通商政策、特にトランプ大統領が導入を表明している関税措置をめぐる不確実性の高まりを理由に、基準金利を0.5%に据え置いた。国内のデータ、例えば賃金上昇率の高さや持続的なインフレなどはさらなる利上げを支持する材料ではあるものの、植田総裁は世界的な保護主義のリスクを指摘し、慎重な姿勢を強調した。日銀はリスクの見通しに貿易政策の懸念を追加し、4月2日のトランプ大統領による関税発表後に再評価する意向を示した。ただちに利上げが示唆されたわけではないが、市場では世界情勢の展開次第で5月か6月までに何らかの動きがあるのではないかと予想されている。
3月10日、連邦準備制度は政策金利を4.25%から4.50%に据え置くことを決定した。その理由として、経済活動が堅調なペースで拡大を続けており、労働市場も依然として堅調であることを挙げた。インフレ率はやや高止まりしているものの、連邦準備制度は経済見通しに対する不確実性の高まりを認め、最大限の雇用と2%のインフレという2つの目標に対する強い決意を改めて表明した。委員会はまた、4月からバランスシートの縮小ペースを減速させることも発表した。今後の政策決定は、入手するデータ、変化するリスク、より広範な経済情勢に左右される。
スイス国立銀行(SNB)は3月20日、低インフレと高まる下方リスクを理由に、主要金利を25ベーシスポイント引き下げ0.25%とした。市場では広く予想されていたこの動きは、スイスが主要経済国の中で最初に緩和策に踏み切った2024年3月以来の一連の金利引き下げに続くものである。2月のインフレ率はほぼ4年ぶりの低水準となる0.3%に落ち込み、SNBはデフレ圧力を防ぐために先手を打つ必要に迫られた。マルティン・シュレーゲル(Martin Schlegel)総裁は、時宜を得た政策対応の必要性を強調し、世界的な関税の緊張が高まる中、輸出主導型経済であるスイスにとって自由貿易の重要性を強調した。
イングランド銀行の金融政策委員会は、2025年3月に銀行金利を4.5%に据え置くことを8対1で可決し、根強いインフレ圧力に対抗するための引き締め姿勢を維持した。近年インフレは落ち着いているが、消費者物価指数(CPI)は1月に3.0%に上昇し、第3四半期には3.75%前後でピークに達すると予想されている。MPCは、国内の成長シグナルがばらつきを見せており、世界貿易の拡大と地政学上の不確実性が高まっていることを指摘した。賃金と物価の圧力は弱まっているものの、依然として高い水準にある。委員会は、2%のインフレ目標に向けた進展を持続させることを目指し、今後は慎重にデータに依存したアプローチを取ることを示唆した。
3月20日、トルコ中央銀行はトルコリラの安定とインフレリスクの抑制を目的として、翌日物貸出金利を200ベーシスポイント引き上げ46%とするという驚きの措置を講じた。また同行は、主要な野党指導者の拘束を含む政治的混乱の高まりを受けて、より引き締め的な金融政策の姿勢を示すため、1週間物レポ金利の下限を停止した。この決定は、中央銀行の政策の信頼性を強化するものとして受け止められており、4月17日の次回の会合では利下げの一時停止の可能性が出てきた。リラは一時的に反発し、トルコ市場は急落後の安定化の兆しを見せた。
3月の政策決定は、中央銀行がさまざまなレベルのインフレ、政治リスク、貿易の不確実性に対応する中で、世界的な金融戦略の相違が拡大していることを浮き彫りにした。スイス国立銀行やトルコ中央銀行のように、目先の圧力に対処するために断固とした措置を講じたところがある一方で、FRB、イングランド銀行、日本銀行など、より慎重な対応を選択し、方向転換の明確な兆候が出るまで待つところもある。世界経済の逆風が強まる中、金融政策の今後の方向性は依然としてデータに大きく依存しており、柔軟性と警戒心が、ますます予測が困難になる状況を乗り切るための鍵となる。