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2026年8月3日、日本政府は日米協調による円買い介入を実施したとする談話を公表しました。また、米国財務長官も今後の協調対応について言及しています。
日米が実弾を伴って協調する為替介入は前例が少なく、2011年の東日本大震災直後以来15年ぶりです。
本記事では日米双方の声明を確認したうえで、過去の協調介入後の値動きを振り返り、前提条件を明示しながら複数のシナリオを整理します。
今回の為替介入が注目されている理由は、日本だけでなく米国も実施したためです。日米それぞれの財務トップが同じ日に、同じ方向で言葉を発しました。まずは両者が何を語ったのかを確認します。
財務省は8月3日、片山財務大臣の談話を正式に公表しました。談話の要点をまとめると次の通りです。
FIMA Repo Facilityは、米国連邦準備制度が外国・国際通貨当局に提供する仕組みで、保有する米国債を担保にドル資金を調達できます。
つまり、外貨準備を取り崩さずに介入原資を確保できる可能性を示唆する内容といえるでしょう。
8月3日の8時20分のロイターの報道によると、片山財務相は記者団に対し、日米間の経済安全保障を通じて両国の揺るぎない同盟につながると説明し、ベッセント長官とはオンライン形式を含め10回程度話をしていると述べています。
また、ベッセント長官も同日、Xへの投稿で協調介入の実施を認め、今後の協調介入にも躊躇なく参加するとの立場を示しました。
米国が自国通貨の下落ではなく円安の是正に踏み込む姿勢を示したとの見方があり、市場では、今後の為替介入の可能性を意識する動きも見られています。
日本時間の7月30日午後10時半すぎ、ドル円は162円台後半から157円台後半まで約5円の幅で急速に円高が進みました。

ロイターによると、介入規模は市場推計として6.4兆円から9.6兆円と報道しています。
翌31日のロイターの報道によれば、米財務省はニューヨーク連銀を通じてユーロを売り、円を買い入れる介入に踏み切りました。
実際の執行はゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが担い、購入した円の金額は明らかにされていません。
米国が自国通貨のドルではなくユーロを売った点には、基軸通貨としてのドルの信認に配慮した意図があったと考えられます。
声明を受けた3日の東京市場では、ドル円が一時155.2円前後と5月上旬以来の円高水準をつけ取引を終えています。

8月4日時点では157円台を回復してはいるものの、今後も為替介入が実施される可能性がある点は、相場動向を確認するうえでの材料の一つといえるでしょう。
協調介入は実施直後に大きく相場を動かしますが、その効果がどこまで続いたのかは事例ごとに異なります。過去に何が起きたのかを振り返ることで、今回の市場動向を整理する際の参考情報になります。
1985年9月のプラザ合意では、日米英仏と西ドイツの5か国がドル高是正で一致し、各国が外国為替市場で協調介入を実施しました。
合意前に1ドル240円程度だった円相場は翌年に一時150円台まで急上昇し、1987年末には120円台で取引されるようになりました。

日本経済は輸出の減少から円高不況に陥りましたが、景気刺激のために日銀が金融緩和を続けたことで、株価は1980年代末にかけて大きく上昇する展開となりました。
為替の水準訂正が実体経済と株価に影響した可能性がある事例といえます。
1995年4月19日、円相場は当時の史上最高値となる1ドル79.75円をつけました。

その後、日米などが円売り・ドル買いの協調介入に踏み切り、円相場は同年末には103円台まで戻しています。
その一方で、日経平均は1995年7月末の16,677円から3か月後の10月末に17,654円、1年後の1996年7月末も20,692円まで上昇しました。

しかし、その後は低迷し、1998年11月には共同宣言前の水準を割れることになります。
2011年3月18日に円を売りドルを買う協調介入が実施されました。協調介入前に76円台の史上最高値をつけた円は、介入後に81円台へ上昇し、さらに85円まで円安が進行しています。

ただし、本格的な上昇は2012年末以降の政権交代とアベノミクスまで待たなければなりませんでした。
その一方で、日経平均は3月末の9,755円から9月末に8,700円へと低迷が続き、ドル円と似たような値動きとなりました。

1995年の為替介入とは異なり、為替介入をきっかけに相場の方向性が変わったとまではいえないでしょう。
今後の相場を一つの方向に決めつけることはできません。どのような条件がそろえば円高が続き、どのような条件なら円安に戻るのか。前提を分けて整理すると、見通しの幅が見えてきます。
円高が進行する可能性がある条件の前提は、日銀の追加利上げ観測が強まり、原油価格が落ち着き、投機筋の円ショートが解消に向かうことです。野村證券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストはNOMURA ウェルスタイルで、7月28日時点の非商業部門の円ポジションが125億ドルの円ショートに達していると指摘しています。これは2024年7月上旬以来の規模で、調整余地が残るとの見方があります。(※あくまで同社の見解であり、相場動向を保証するものではありません)
その一方で、円安方向に動く可能性がある条件の前提としては、FRBの利上げ観測、原油高、日本の財政悪化懸念といった要因が残り続けることがあります。
一つの見方として、木内登英氏は介入効果の持続性に疑問が残るとしており、シニア為替アナリストの神田 卓也氏も外為どっとコム総合研究所のコラム上で、今年1月の日米協調レートチェックの効果は約2か月、4月から5月の単独介入は1か月半程度の持続だったと分析しています。
1998年の例のように、数か月で介入前の水準に戻る展開も否定できません。中間的なシナリオとして、介入警戒で上値が抑えられる一方、円安要因も解消されないため、155円前後から160円台前半のレンジで推移する展開も考えられます。
円高は輸出企業の採算に逆風となる一方、株価は為替だけで決まるわけではありません。
野村證券によれば、上場企業の2026年度の想定為替レートは152円前後で、輸出企業は150円前後としている例が多いとされます。
この前提に立てば、155円から160円前後で推移する限り業績面の下方修正圧力は限定的にとどまるかもしれません。
逆に150円を明確に下回る円高が定着した場合には、想定レートとの乖離が業績予想の修正につながるリスクが高まるとみられます。
過去の事例でも、1995年後は上昇、1998年後は下落、2011年後は低迷と反応が分かれており、為替以外の景気動向や海外市場の動きを合わせて確認する必要があります。
本記事は市場動向の解説と情報提供を目的としたものであり、特定の取引を推奨する投資助言ではありません。為替やCFDの取引には相場変動により元本を割り込むリスクが伴い、レバレッジは損失を拡大させる可能性もあります。過去の値動きは将来の結果を示すものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行っていただけますようお願いいたします。