トランプが大統領になると円高になるのはなぜ？就任後の見通しを解説

「トランプ氏が大統領になったら円高になるといわれているのはなぜ？」「トランプ大統領になったら円安・円高のどっちになるの？」といった疑問を持っていませんか？

2025年1月20日にトランプ氏が米国大統領に就任しました。大統領選挙でトランプ氏が勝利したときから「トランプ氏が大統領になったら円高になる」と主張する専門家もいました。

本記事では、トランプ氏が大統領に就任したら円高になるのか、円高シナリオが揺らいでいる理由について詳しく解説します。 

トランプ大統領が就任したら円高になると言われる理由

トランプ大統領が就任したら円高になると言われる理由は、主に3つあります。

1. 財政拡張的な政策が進められる可能性が高いから
2. 貿易政策や関税政策が日本経済に影響を与えるから
3. 市場がリスク回避の動きをする可能性があるから

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

1.財政拡張的な政策が進められる可能性が高いから

トランプ氏が再選した場合、彼の「トランポノミクス2.0」と呼ばれる政策が実施されると予想されています。

トランプ氏の政策は、減税や規制緩和を中心に据えたもので、経済成長を促進することを目的としています。

しかし、財政赤字の拡大により長期的には金利の上昇を招く可能性があります。

金利が上昇すると、ドルが強くなる一方で、円安が進むという見方もありますが、実際には市場の反応は複雑です。

2.貿易政策や関税政策が日本経済に影響を与えるから

トランプ氏が再任された場合、注目すべきは貿易政策が日本経済に与える影響です。トランプ氏は、輸入品に対して10%から20%の関税を課す方針を示しており、日本からの輸出に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

特に自動車産業においては、メキシコで生産された自動車に対して100%の関税を課すと発言しており、日本の自動車メーカーにとっても大きなリスクとなるでしょう。

さらに、トランプ氏は、製造業の国内回帰を強調しています。アメリカが日本を含む海外の製品に高い関税をかけた場合、日本の製品はアメリカ国内の製品よりも高い値段にしなければ採算を取りにくくなるため、日本の輸出量が減少するかもしれません。

そうなれば、円の価値が上昇する可能性があります。

3.市場がリスク回避の動きをする可能性があるから

トランプ政権の動きにより市場がリスク回避の動きを強める可能性があります。

トランプ氏は第一次政権にも市場関係者を驚かせるような政策を多く実施しました。市場関係者に不安を与えるような政策を実施した場合、相場の不確実性が増して、ボラティリティが高くなる可能性があります。

そうなると、投資家は大きな損失を被るリスクを避けるために、他の通貨と比べて安全資産とされる円を買う動きが起きるかもしれません。

トランプ氏就任後の円高シナリオが揺らいでいる理由

トランプ氏就任後の円高シナリオが揺らいでいると考える人もいます。その理由は主に2つあります。

1. 減税やインフラ投資の拡大が期待されている
2. 日米の金利差の拡大

順番にそれぞれの理由を見ていきましょう。

1.減税やインフラ投資の拡大が期待されている

1つ目の理由は、減税やインフラ投資の拡大が期待されているからです。

トランプ政権が行っている減税政策により、アメリカでは企業や個人の可処分所得を増加させ、消費を刺激することが期待されています。特に、法人税の引き下げは企業の利益を押し上げ、投資を促進する効果があります。このような経済活動の活性化により、米国経済の成長を加速させ、ドルの価値を押し上げる要因になるでしょう。

さらにトランプ氏がインフラ投資の拡大を公約として掲げていることによりアメリカの経済成長が促進されると考える専門家もいます。老朽化したインフラの更新や新規プロジェクトへの投資が行われれば、新たな雇用が生まれて、経済全体が活性化するでしょう。

その結果、長期的にドル高円安が進む可能性があります。

2.日米の金利差の拡大

2つ目は、日米の金利差の拡大があるからです。一般的に日本の金利が低く、米国の金利が高い状態で金利差が拡大すると、ドル高・円安が進行する傾向があります。

トランプ氏が掲げる減税や規制緩和、関税引き上げといった政策が実施されれば、アメリカにインフレを引き起こす可能性があります。

インフレの加速により米国の長期金利が上昇すれば、ドルの需要が高まり、ドル高円安が進むでしょう。

特に今回のトランプ政権では、「トリプルレッド」（共和党が議会の上下院を制する状況）が成立したことで、政策の実行はスムーズに進むと考えられています。

とはいえ、本稿執筆時点において日本銀行が利上げをする可能性が高くなっているため、今後両国の金利差が縮小する可能性はあります。しかし、利上げを長期間実施しなかった場合や米国が何らかの理由で再度利上げをした場合は、金利差が拡大してドル高円安が進行する可能性もあるので注意が必要です。

トランプ大統領就任後の為替レートの予想

ここからは、トランプ大統領就任後の為替レートの予想について専門家の意見や大統領就任式当日の値動き、テクニカル分析での長期的な予想について解説します。

英国HSBCやバンク・オブ・アメリカは1ドル160円を予想

トランプ大統領就任後の為替レートについて、英国HSBCやバンク・オブ・アメリカは1ドル160円を予想しています。 

HSBCの予想では、米国の金利が高止まりすることでドルが強くなるため、2025年6月末時点で1ドル=160円に達すると見通しを示しています。また、同じく1ドル160円を予想しているバンク・オブ・アメリカは、米国の金融政策が円安を助長する要因として、利上げの可能性や経済成長の強さを挙げています。米国の経済が堅調である限り、ドルは他の通貨に対して強くなると予想しているようです。

大統領就任式後のドル円の為替レートはどうなっている？

トランプ氏は米国大統領の就任初日に新たな関税の導入を見送るとの観測があったことで、1月21日の午前の相場は株高・円高・債券高のトリプル高で始まりました。

しかし、その後メキシコやカナダへの関税を検討していることが伝わると一転して、株高や円高の流れが反転しました。

本稿執筆時点（2025年1月21日）では、トランプ氏の発言にドル円相場が振り回される展開が続くことが予想されます。

テクニカル分析でのドル円の予想レート

次にテクニカル分析でのドル円の予想レートを見ていきましょう。

以下は1月22日深夜時点のドル円の日足チャートです。現在の価格はトレンドライン上に近づいています。

トレンドライン上での反発により今後も円安が続く可能性があります。その場合は、直近の161円台あたりが上昇の目安となります。

一方で、トレンドラインを割れた場合は、9月から続いていた上昇トレンドが下降トレンドに転換する可能性があるので注意が必要です。円高になった場合の目処は、9月につけた最安値の140円台がひとまずの目安となるでしょう。

次に1月22日深夜時点のドル円の週足チャートも確認します。現在の相場を見ると、直近高値を超えられなかった場合、三尊天井を警戒すべきです。現時点で144円より下にあるネックラインを割れた場合は、さらに大きく下落して2023年1月につけた128円台までの円高も考えられます。

まずは、直近高値の162円台を超えられるかに注目するべきでしょう。

トランプ大統領就任後の為替レートは日本人の多くが注目している

ここ数年ドル円の為替レートが大きく円安に傾いていることから、一部の日本人は円高是正を期待しています。

本稿執筆時点では、大統領就任から日が経っていないのでなんともいえないですが、今後円高になるのか注視するためには専門家の意見だけでなく、テクニカル指標を使って分析することを推奨します。

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