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物理世界で動くAI「フィジカルAI」が、株式市場で新たな投資テーマとして注目を集めています。
とはいえ、フィジカルAIとは何か、生成AIとどう違うのか、なぜ注目されているのか疑問に思う人もいるでしょう。
本記事では、フィジカルAIの意味と生成AIとの違いを整理したうえで、日本と米国で本命として名前が挙がりやすい銘柄、関連ETF、投資に伴うリスクまで解説します。
なお本命という呼び方は市場での取り上げられ方に基づく通称であり、業績や株価の優劣を示すものではありません。

フィジカルAI(Physical AI)とは、生産ラインのロボットや自動運転車といった物理空間で稼働する自律型のAIシステムが、周囲の環境を把握したうえで複雑な作業を実行するためのAI技術を指します。学術的にはエンボディドAI(身体性AI)とも呼ばれます。
フィジカルAIという言葉が投資・産業分野で広く注目されるきっかけの一つとなったのは、半導体大手NVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏が、2025年1月のテクノロジー見本市「CES 2025」の基調講演で、フィジカルAIを次のAIの進化軸として紹介したことにあります。
フアン氏はロボットや自動運転車に搭載される自律型のAIとしてこれを位置づけ、大きな反響を呼びました。
生成AI(Generative AI)は、学習データから言語や画像のパターンをとらえ、文章作成や画像生成などを行う技術で、その出力はテキストや画像といったデジタルデータが中心です。
これに対しフィジカルAIは、カメラやセンサーから得た情報をAIが理解・判断し、その結果をロボットなどの物理的な動作へと反映させる点に違いがあります。
つまり、デジタル空間の中だけで完結していたAIを、重力や衝突といった物理法則が働く現実空間へと広げる技術だと考えられます。
専門的には、視覚情報を言語で解釈するVLM(Vision-Language Model:視覚と言語を結びつけて状況を理解するモデル)と、それを具体的な動作に落とし込むVLA(Vision-Language-Action:理解した内容を動作へ変換するモデル)の連携が中核とされているのです。
フィジカルAIは単一の技術ではなく、複数のレイヤーが積み重なって成立します。銘柄を理解するうえでも、どの層を担う企業なのかを意識すると整理しやすくなります。
| レイヤー | 役割 | 主な担い手の例 |
| 基盤モデル・ソフトウェア | 状況判断や動作生成を担うAIモデルや制御基盤 | NVIDIA、富士通、ソフトバンクグループ |
| 半導体・計算基盤 | AIの学習・推論を支えるGPUや車載・エッジ向けチップ | NVIDIA、ソニーグループ |
| センサー | 周囲を認識するイメージセンサーやLiDAR | ソニーグループ |
| 精密部品 | 減速機・ベアリング・ボールねじなどの駆動部品 | ナブテスコ、日本精工 |
| ロボット完成品・制御システム | 産業用ロボットやヒューマノイド、自動運転車などの最終製品 | ファナック、安川電機、川崎重工業、テスラ、アルファベット |
日本企業は特に精密部品やセンサー、制御技術といったハードに近い層で世界的な競争力を持つとされ、この点が後述する注目理由の一つになっています。
どのレイヤーを担っているかを整理すると、本命と呼ばれる企業がどのような領域でフィジカルAIに関わっているのかを把握しやすくなります。

フィジカルAIが投資テーマとして注目される背景には、大きな市場成長の予測があります。
調査会社MarketsandMarketsの統計によると、ヒューマノイドロボットの市場規模は2026年の54.1億ドルから2035年には502.7億ドルへと拡大し、年平均成長率(CAGR)は28.1%と予測されています。
また、Econ Market Researchの分析では、フィジカルAI市場は2026年の66.7億ドルから2035年には856.4億ドルへ、CAGR32.8%で成長すると見込まれています。
これらは調査機関ごとに前提が異なり数値に幅があるため、あくまで一つの目安として捉える必要があります。
第二に、NVIDIAによる技術提唱と基盤整備があります。同社はヒューマノイドロボット向けの基盤モデル「Isaac GR00T」や、物理法則に沿った学習データを生成する世界モデル「Cosmos」、シミュレーション環境「Isaac Sim」などを相次いで発表し、フィジカルAIの開発を後押ししています。
ジェンスン・フアン氏は2026年7月の来日時に、日本の製造業やメカトロニクス(機械と電子制御を融合した技術)の強みとフィジカルAIの融合により、日本が次の産業革命をリードする可能性に言及しています。
第三に、少子高齢化に伴う労働力不足があります。人手不足を背景に、人と同じ空間で働けるロボットへの需要が製造・物流・ヘルスケアなどで高まっていると考えられます。
第四に、企業間の提携が相次いでいることです。ソフトバンクグループによるロボット事業買収、富士通・ファナック・安川電機・川崎重工業による連合結成など、具体的な事業化の動きが投資家の関心を集めています。
こうした具体的な取り組みを進める企業が、フィジカルAIの本命として市場で取り上げられやすい傾向があります。
日本のフィジカルAI銘柄で本命として名前が挙がりやすいのは、産業用ロボットや精密部品、センサー、制御ソフトなど、フィジカルAIに関連する事業を手掛ける企業です。
ここでは、フィジカルAIの本命銘柄として取り上げられることが多い6社を紹介します。いずれもメリットとリスクの両面があり、以下は事業内容とフィジカルAIとの関連性の説明にとどめます。

出典:Yahoo!ファイナンス
ソフトバンクグループは通信事業を出発点に、現在は世界のテクノロジー企業への投資を主軸とする持株会社です。孫正義会長は次なるフロンティアはフィジカルAIであると掲げており、同社は2025年10月にスイスのABBのロボティクス事業を約53.75億ドル(約8,187億円)で買収する契約を締結しました。産業用ロボットの製造・販売基盤を取り込むことで、AIを現実世界の作業に結び付ける体制づくりを進める形です。同社はOpenAIへの大型出資を通じてAI基盤にも関与しており、ロボットとAIの融合を成長の柱に据えています。一方で大型投資の成果が表れる時期は不透明で、計画通りに進まない可能性も残ります。

出典:Yahoo!ファイナンス
ファナックは産業用ロボット世界大手の一角で、NVIDIAとの連携を強化し、自社のシミュレーションソフト「ROBOGUIDE」とNVIDIA「Isaac Sim」を密結合させた仮想空間でのロボット操作環境を2026年5月に公表しました。あわせて、協働ロボット「CRX」2台による双腕システムにNVIDIAのロボット基盤モデル「Isaac GR00T N」を用い、Tシャツを畳む作業を模倣学習(人の作業を見て学ぶ手法)で実現した事例を示しています。ケーブルなど柔らかい部品の取り扱いについては、Isaac Simとの連携により高精度なシミュレーションが可能になるとしています。

出典:Yahoo!ファイナンス
安川電機はサーボモーター(精密に位置や速度を制御するモーター)や産業用ロボットに強みを持ち、工場の自動化を支える基幹部品から完成品まで手掛けるメーカーです。同社は自律的に判断して動作する産業用ロボットMOTOMAN NEXTを展開し、周囲の状況に応じた作業への対応を図っています。2026年7月にはソフトバンクと、フィジカルAIを活用した柔軟な物体のハンドリングシステムを実証しました。同社は富士通・NVIDIAとの連合にも参画しており、単独ではなく他社と組んで技術基盤を整える動きが目立ちます。

出典:Yahoo!ファイナンス
富士通は国内大手の情報技術企業で、システム構築やソフトウェア開発を主な事業としています。同社はNVIDIAの技術を取り入れ、複数のロボットや設備を連携させて制御する基盤の開発を進めています。個々の機械を動かすだけでなく、現場全体を一つのシステムとしてつなぐソフトウェア面での役割が期待されています。同社は2026年7月にファナック・安川電機・川崎重工業とフィジカルAI分野の事業検討を開始したと発表し、ロボットメーカーと情報技術企業が連携する枠組みづくりを進めています。実用化の時期や範囲は今後の検討次第となります。

出典:Yahoo!ファイナンス
ソニーグループはイメージセンサー(光を電気信号に変えて画像を取り込む部品)でシェアを持ち、AIが現実世界を認識する目にあたる部分を担っています。ロボットや自動運転車が周囲を把握するには高性能なセンサーが欠かせず、この領域での同社の存在感が関連分野での注目につながっています。同社は2026年5月に台湾のTSMCと次世代イメージセンサーの開発・製造に関する戦略的提携に向けた基本合意を締結し、同年8月には合弁会社Advanced Vision Semiconductor Manufacturingの設立に関する確定契約を結びました。この合弁会社は熊本県合志市を拠点にスマートフォン向けイメージセンサーの量産開発・製造を担う位置づけで、2029年の量産開始が予定されています。

出典:Yahoo!ファイナンス
日立製作所は電機や社会インフラを幅広く手掛ける総合メーカーで、近年は情報技術を軸とした事業に力を入れています。同社は現場で自ら学びながら動作を最適化し、柔軟物の組付けなど手順が定まりにくい複雑な作業を自動化するフィジカルAI技術を開発しています。あらかじめ細かく動きを指定するのではなく、作業を繰り返す中で調整していく仕組みが特徴です。同社は製造だけでなく保守や物流など幅広い産業現場への展開を掲げており、インフラ事業で培った知見と組み合わせる形での実装を進めています。
米国のフィジカルAI銘柄では、半導体や自動運転、物流自動化、医療ロボットといった領域で先行する企業が本命として挙げられる傾向があります。ここでは代表的な5社を見ていきます。

出典:Yahoo!ファイナンス
NVIDIAはフィジカルAIの中核を担う存在で、AIの学習と推論に使われるGPUを供給しています。加えて同社は、ヒューマノイド向けの基盤モデルIsaac GR00T、現実世界の物理法則を学習させる世界モデルCosmos、ロボットの動作を仮想空間で検証するシミュレーション基盤Isaac Simを提供しています。多くのロボット企業がこれらを採用しており、同社が開発の土台を広く押さえている点が特徴です。一方で競合の参入や顧客企業による内製化といった変化も想定されます。
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出典:Yahoo!ファイナンス
テスラはEVメーカーとして知られ、自動運転技術のFSDで培ったAIをヒューマノイドロボットOptimusに応用しています。車両で蓄積した認識や判断の技術をロボットへ転用する構想で、走行データを扱ってきた経験が開発の基盤となっています。同社は報道や市場関係者の見通しでは、2026年7〜8月にOptimus V3の発表・量産が予定されているとされます。

出典:Yahoo!ファイナンス
アルファベットはグーグルを傘下に持つ持株会社で、同じく傘下のWaymoが自動運転タクシーを米国の複数都市で商用運行しています。実際の道路で走行データを積み重ねている点が特徴で、自動運転はAIが現実世界を認識して機械を動かすフィジカルAIの代表的な応用領域といえます。Waymoは2026年2月に160億ドルを調達し、東京やロンドンを含む海外への拡大に資金を投じるとしています。規制への対応や安全性の確保が前提となるため、地域ごとに展開の速度は異なることが考えられます。

出典:Yahoo!ファイナンス
アマゾンは電子商取引とクラウド事業を柱とし、倉庫内の物流自動化で先行しています。同社は2025年7月に稼働ロボットが累計100万台に達したと発表しました。
欧州の物流網の刷新に向けた投資計画を公表し、触覚センサーを備えたロボット「Vulcan」などを導入しています。

出典:Yahoo!ファイナンス
インテュイティブ・サージカルは手術支援ロボットのダビンチで世界をリードし、医師が操作装置を通じて器具を動かす低侵襲手術の分野で実績を重ねています。第5世代の「ダビンチ 5」は、器具の先端にかかる力を医師に伝えるForce Feedback機能や、AI・機械学習を活用したデータ解析機能を搭載し、医療分野のフィジカルAIの代表例といえます。導入には教育や運用体制の整備が伴います。
本記事で取り上げた日米のフィジカルAI銘柄の株価と時価総額は次の通りです。
| 銘柄名 | 株価 | 時価総額 |
| ソフトバンクグループ | 5,255円 | 30兆157億6,200万円 |
| ファナック | 6,035円 | 5兆9,280億1,400万円 |
| 安川電機 | 4,979円 | 1兆3,278億5,200万円 |
| 富士通 | 3,646円 | 6兆3,432億3,200万円 |
| ソニーグループ | 3,785円 | 22兆5,787億2,200万円 |
| 日立製作所 | 5,196円 | 23兆5,667億7,500万円 |
| NVIDIA | 216.85ドル | 5兆2,523億2,385万ドル |
| テスラ | 345.13ドル | 1兆3,631億729万2,000ドル |
| アルファベット | 338.20ドル | 1兆8,692億3,140万ドル |
| アマゾン | 260.11ドル | 2兆8,056億2,802万3,000ドル |
| インテュイティブ・サージカル | 374.48ドル | 1,322億9,556万ドル |
※2026年8月21日18時(日本時間)時点の情報です。
最新の情報は各証券会社や公式資料での確認が必要です。
個別銘柄の選定が難しい場合、複数の関連企業へ分散投資できるETF(上場投資信託:証券取引所に上場する投資信託)を活用する選択肢もあります。日本から投資しやすい代表的なものは次の通りです。
| iシェアーズ オートメーション & ロボット ETF | STOXX指数に連動 世界のロボ関連企業に投資 東証に円建てで上場 |
| グローバルX ロボティクス&AI-日本株式 ETF | Indxx日本指数に連動 日本のロボ・AI企業に投資 東証上場のテーマ型 |
| グローバルX ロボティクス&AI ETF | 米ナスダックに上場 Indxx世界指数に連動 ロボや自動運転関連に投資 |
ETFは分散投資により個別銘柄のリスクを抑えやすい一方、テーマ全体が下落する局面では基準価額も下落します。分配金や信託報酬などの条件は商品ごとに異なるため、各運用会社の資料での確認が一つのアプローチとして検討できます。
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フィジカルAI銘柄には成長期待がある一方、本命とされる銘柄であっても値動きが安定するとは限らず、以下のようなリスクが指摘されています。
テーマ株特有のボラティリティ(価格変動の大きさ)については、期待が先行して株価が大きく変動しやすく、材料次第で急落する場面も想定されます。実際に倉庫自動化関連のシンボティックは、2026年前半に株価が24%下落したと報じられています。
また、産業用ロボットや部品メーカーの業績が顧客企業の設備投資の動向に左右されやすい点に注意が必要です。各社の受注環境については、決算資料や有価証券報告書の事業等のリスクの項目で確認できます。
加えて、テーマ株は将来の期待が株価に反映されやすいため、各銘柄のPERやPBRなどの指標を実際の業績と照らして確認することが、投資判断における一つのアプローチとして検討可能です。
技術の実用化遅延リスクとしては、ヒューマノイドの量産や自動運転の普及計画を各社が公表しているものの、計画はあくまで予定であり、遅延や下方修正の可能性があります。
これらを踏まえ、短期的な値動きだけでなく、中長期的な視点で事業の進捗を見極めることが一つの考え方といえます。

フィジカルAIについて、生成AIとの違いや本命銘柄の考え方、ETFでの投資可否など、疑問を持たれやすい点を解説します。
ロボットや自動運転車など、物理世界で自律的に動作するAI技術を指します。カメラやセンサーで周囲を認識し、判断して物理的な動作を行う点が特徴です。
生成AIが文章や画像などデジタルデータを出力するのに対し、フィジカルAIはその知能を現実世界での行動へと拡張します。物理法則が働く環境で動く点が大きな違いです。
本命として名前が挙がりやすい銘柄として、日本ではソフトバンクグループ、ファナック、安川電機、富士通、ソニーグループ、日立製作所、米国ではNVIDIA、テスラ、アルファベット、アマゾン、インテュイティブ・サージカルなどが挙げられます。
ただし本命という区分は市場での取り上げられ方に基づく通称であり、業績や株価の優劣を保証するものではありません。判断は投資家によって異なり、特定銘柄を推奨するものでもありません。
日本では、精密部品やセンサー、産業用ロボットといったハードウェアに近い領域を担う企業が本命として挙げられやすい一方、米国では半導体や基盤モデル、自動運転など、AIの開発基盤やソフトウェアに近い領域を担う企業が中心となる傾向があります。
どちらが優れていると断定できるものではなく、担っているレイヤーが異なると捉えると整理しやすくなります。
テーマ株特有の値動きの大きさ、設備投資サイクルによる業績変動、バリュエーションの割高感、技術の実用化遅延などが挙げられます。株式取引には元本割れのリスクが伴います。
iシェアーズ オートメーション&ロボット ETF(2522)やグローバルX ロボティクス&AI-日本株式 ETF(2638)など、日本から投資できるロボット・AI関連ETFがあります。分散投資に活用できる一方、テーマ全体の下落局面ではETFも下落します。
減速機やベアリングなどの精密部品、イメージセンサー、制御技術といった「ハードに近い層」で世界的な競争力を持つとされるためです。NVIDIAのフアン氏も、日本の製造業やメカトロニクスの強みとフィジカルAIの融合に期待を示しています。
フィジカルAIは、ロボットや自動運転車など物理世界で自律的に動作するAI技術を指し、デジタルデータを出力する生成AIとは動作の対象が異なります。
本命として名前が挙がりやすいのは、日本では精密部品やセンサー、産業用ロボットを担うソフトバンクグループやファナック、安川電機、富士通、ソニーグループ、日立製作所、米国では開発基盤や応用領域で先行するNVIDIAやテスラ、アルファベットなどです。
ただし本命という区分は市場での取り上げられ方に基づく通称であり、業績や株価の優劣を保証するものではありません。
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